生き物に、じんわり思いを馳せる

Interview
ado(アド)渡辺 真希子

photo by Makiko Watanabe

ヒトと動物のあいだ、生命のありようの表現を模索し、独自の作品を生み出し続けるado(アド)さん。ご自身の作品や制作への思い、お気に入りの「Arts&Crafts」についてうかがいました。

ケニア滞在で気づいた、絵を描くことの可能性

― 作家として活動を始めたきっかけを教えてください。

小さい頃から「アフリカで野生動物の保全に携わりたい」という夢がありました。
ケニアで獣医をしている神戸俊平さんの本に感銘を受けて、大学在学中に居候をお願いしたら快く受け入れて下さって。それで、現地に2ヶ月間滞在しました。

でも実際行ってみると、獣医でもなく、現地の方のように屈強な体があるわけでもなく、語学力もない自分に出来ることはないな・・・と、強く実感して。
それでも自分なりに何か出来ないかなと思って、マサイ族やケニアの方に似顔絵を描いてあげたら喜んでくれたのが嬉しくて。
言葉も超えて伝わっていく絵というものの可能性を感じて、絵を描き始めました。

アドさん所有の神戸俊平さんの著書。現在も獣医師として、アフリカの大地に根を張る活動を続けている。

― 作家として最初に制作した作品を教えてください。

20年くらい前の作品で、当時はティンガティンガやケニアで見た現地の方たちが描いた看板がすごく好きだったので、画風もそれに影響を受けていて、色や線が強かったです。
その後も数年ごとに作風が変わっていっています。

 

ゾウを描いた大型の作品。最近のアドさんの作風は繊細で柔らかい印象。

実際の経験をもとに、生き物と対峙したい

― 制作するうえで大切にしていることは何ですか?

本で学んだり、映像・写真から得るものは、勿論あります。でもなるべく、いいことも悪いことも実際に見たり触ったり経験して、生き物と対峙したいなと思っています。

 

愛猫のサビ。好奇心旺盛な女の子。

生き物との距離感の難しさ

― 制作する上で大変なこと、苦労していることはありますか?

生き物と、どういうバランスで対峙すればいいのかわからなくなって落ち込むとき。それでも年を経るごとに、少しずつ気持ちの保ち方がうまくなってきた気はします。

すごく現実的なことを言えば、絵をいっぱい描いていると、腱鞘炎っぽくなりやすくなったり、肩が痛くなるようになったこと。笑

 

愛猫のだゆぽん。17歳は人間でいうと84歳。おばあちゃんだけど、元気いっぱい。

― 制作をされていて「楽しい」「嬉しい」と思う瞬間はどんな時ですか?

生き物を知って「おお!」と感じたとき。
自分で「生き物を感じる絵(作品)」が描けたとき。
それが「見た人にも伝わったかも」と思えたとき。

新しいアトリエには大型の植物画を。アドさんにとって植物も動物と同様に大切に感じる「生き物」。

作品を通して、生き物に思いを馳せる

― ご自身の作品をどう楽しんで欲しいですか?

好きな具合に楽しんでもらえたら嬉しいです。
そしてときには、その生き物がどこかで生きていること、多種多様な生き物がそれぞれの場所で暮らしていることに、じんわり思いを馳せてもらえたらいいなと思っています。

生き物とふれあうアドさん。


わたしのArts&Crafts

アート作品、民芸的なもの、拾ったもの、自然界からのもの。好きなものを集めてるゾーンの一角です。
どれも好きで、どれも自分の気持ちの糧になっています。

 

ado(アド)渡辺 真希子|Makiko Watanabe

ヒトと動物のあいだ、生命のありようの表現を模索。
動物に対して何か出来ることがないか考えながら制作活動を行う。
2003年 野生動物保全に携わりたくてケニアに訪問滞在
2005年 九州東海大学 農学部 応用動物科学科卒
2005年 熊本市動植物園嘱託職員勤務
2012年より熊本を拠点にフリーで絵描き活動中

Instagram|@ado_makiko.watanabe

2023.8.25

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