「感情が伝わる形を作りたい」

Interview
櫻井 彩

photo by Aya Sakurai

山口県在住のガラス作家、櫻井 彩さん。

彼女の詩的で抒情的な作品は、
どのようにして生まれるのでしょうか。

制作についてやガラスへの思い、
愛用の「Arts&Crafts」について
うかがいました。

ガラスの魅力に魅せられて

1.作家として活動を始めたきっかけを教えてください。

「作家になろう!」と思ったわけではなく、モノを作っているのが楽しくてそのまま続けている、という感じです。

吹きガラスに出会って制作がより楽しくなり「もっとガラスを知りたい、吹きたい」と思って、ガラスの道を志しました。

ガラスという素材に惹かれたのは、透明、光、という素材の美しさが一番で、吹きガラスのダイナミックな作業の面白さ、手で直接触れないもどかしさも魅力でした。

真っ赤に溶けた流れるようなガラス、それが冷めて透明になる不思議。
ガラスって本当に、ドキドキしてしまいますよね。

作家活動の原点はモビール

2.作家として最初に制作したアイテム(はじめて販売したアイテム)を教えてください。

「作家になろう!」と思って始めたわけではないので、正直、いつから作家なのだろう・・・と考えたりしますね(笑)

商品として初めて作った作品は、モビールです。
15年くらい前の学生時代に、仲間うちで展示会を開催した時に制作しました。

太陽の光にキラキラと反射するそんな光のようなものが作りたかったのです。

「ガラスって綺麗だなって感じてもらいたい」

そういう、とてもシンプルな考えから生まれたものでした。

こちらは、その学生時代の作品をもとに、その後、働いていた工房で制作したモビール。
それから多少サイズが変わったり色を付けたりするなど少しずつ変化しながら、独立するまで作り続けていたそう。

現行の作品、追憶のモビール
中央をくびれさせたパーツを糸で繋げるという形状は、前出のモビール制作当初から変わらず。

いつも、心のどこかを空けておく

3.制作するうえでのインスピレーション、大切にしていることはありますか?

旅行と散歩が好きです。

日常から少し離れることで客観視できますし、もちろん新しい発見もあります。

近所を散歩するだけでも頭がスッキリしますし、季節の移り変わりなどを感じることができます。

そうゆう、心のどこかを空けておくということは、大事だと思います。

くだらないことや、なんてことない事を、ストックしておくような場所。

目に見た物を具体的に形にしたり模様にしたりというよりは、その時の感情が伝わる形を作りたいと思います。

うまくいかない事を、自分なりの方法で形にしていく

4.制作する上で大変なこと、苦労していることはありますか?

うまくいく事よりも、むしろ、うまくいかない事ばかりです。
技術的にも設備的にも、イメージがなかなか形にならなかったり。

でも、それをアイデアでカバーしたり、じっくり時間をかけたりして、なんとかイメージした形に仕上げていく。
大変だけど、それが楽しみの一つでもあります。

それとは別に、夏の吹き場は過酷な暑さなので、集中力を保つのには苦労しますけどね(笑)

暮らしの中で、深呼吸するきっかけになれば

5.ご自身の作品を、どう楽しんでいただきたいですか?

正直、作り手の想いは色々あります。

でも、使ってもらう方には、単純に「ガラスって綺麗だな」とか、「見てると、ついぼーっとしちゃうなぁ」とか、あれこれ考えずに、ガラスの存在そのものを楽しんで欲しい。

日々の暮らしの中で、深呼吸するきっかけになったら、嬉しいなと思います。

花留め (環 / 掌)


わたしのArts&Crafts

同じ山口県の作家、ムクロジ木器 のお盆です。

五年前くらいに、展示会で必要になって購入したもの。
手触りがよく、どの方向からも美しくて、使う人のことをよく考えて作られています。

ガラスと木は当たってもカチャカチャいわないし、相性が良いです。
何を載せても、サマになります。

同世代の作家ものは、良い刺激にもなりますしね。

櫻井 彩(さくらい あや)|ガラス作家

1982年、山口県周南市生まれ。
京都造形芸術大学空間デザイン科卒業。

在学中にガラスの魅力に出会い、卒業後、富山ガラス研究所でガラスを専門的に学ぶ。

その後、長野県安曇野にあるガラス工房に就職し、体験業務をしながら作家活動を開始。
2014年 地元山口に戻り、個人工房を持つ。

2021.11.3

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