「線」の表現

Interview
Yuki MIKAMI

photo by Yuki MIKAMI

モチーフに意味を持たせず、純粋に線と形、余白やバランスを重視して、独自の世界観を表現するYuki MIKAMIさん。ご自身の作品や制作への思い、お気に入りの「Arts&Crafts」についてうかがいました。

制作過程で切った際に出る紙片や、使用しなかったドローイングの一部から「いい線」を切り取って、コラージュに使用するために収集している。

線と形の表現

― アーティストとして活動を始めたきっかけを教えてください。

現在の活動は、30代半ばくらいから始めました。自分が持っている感覚や視点を、表現をしたいと思ったんです。当時は色を使ったり、造形として関心があった髪型をモチーフにした作品を、形と線の表現として制作していました。展示も美容室を中心に行っていました。その頃、いくつかロゴを書かせていただいたことをきっかけに、文字をモチーフにして描くようになりました。

よく使用する画材。画材は、描きたい線に合わせて変えている。

今回のトートバッグデザインの制作過程で使用しなかった線の一部。

もともと文字を書くことも絵を描く感覚と同じという意識があり、自然に現在のドローイングの表現に繋がっていきました。SNSや展示会をきっかけに徐々に作品を知ってもらって、お仕事をいただけるようになりました。周りの方々にいろいろ助けていただき、活動を続けることができていると感じています。

押入れを活用した制作スペース。

線の表情、余白のバランス

― 制作するうえでのインスピレーション、大切にしていることはありますか?

日常生活の様々なことが、作品制作につながっていると思います。洗濯物の色をグラデーションになるようにバランスよく干したり、料理とお皿が合うように食卓を考えたり。目の前の風景を平面で見ていて、形や配色、余白のバランスを無意識に見ています。

作品では、線の濃淡や擦れなどの表情、制作過程で付着したインクも、画面を構成する要素として捉えて、余白を含めたバランスを大切にしています。

― 制作するうえで大変なこと、苦労していることはありますか?

線が納得いかないと、何枚も繰り返し描きます。筆圧が強いので、ダーマトグラフの芯がすぐにボキボキ折れます。

― 制作をされていて「楽しい」「嬉しい」と思う瞬間はどんなときですか?

制作中、意図していない線を見つけたときです。あと、自分の元を離れた作品がそれぞれの場所で飾られているのを見たとき、とても嬉しいです。

オリジナルトートバッグについて

― 今回のトートバッグについて、デザインのコンセプトを教えてください。

天気の良い春の日に、このバッグを持ってお出かけしたくなるようなイメージ。線が映えるよう太い線で、やわらかい動きのある線を描きました。

― 画材は何を使われましたか?

墨汁と筆です。

 

― MIKAMIさんのお気に入りポイントを教えてください。

筆ならではの「線の表情」です。

ただ純粋に「線」を愉しむ

― ご自身の作品をどう楽しんで欲しいですか?

わたしの作品は、基本的にメッセージ性を持ちません。見る人が、自由に「線」を見ていただけたら嬉しいです。


わたしのArts&Crafts

「白日(はくじつ)」で購入した砥石です。
形がとても美しくて、いつも目に着くところに置いています。

Yuki MIKAMI|アーティスト

東京都在住。
桑沢デザイン研究所夜間部デザイン専攻科ビジュアルデザインコース卒業。
線と形を表現の対象として、ドローイングやコラージュ、シルクスクリーンなどで作品を制作。モチーフに意味を持たせず、純粋に線と形、余白やバランスを重視して、独自の世界観を表現。

Instagram|@shortbangs
HP|https://yukimikami.theblog.me/

2022.05.18

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