オルネ ド フォイユ:フランス雑貨やアンティーク家具のインテリアショップ

三田真由さん
TOSAKANMURI FOODS主宰

トサカンムリさんといえば、カレーパン! と答える人も少なくないでしょう。ふわふわで、中身が濃くって、ちょっぴりスパイシーで……。主宰の三田さんによるコラムも、おんなじ味。今回は、「TOSAKANMURI FOODS」の生まれるきっかけ(?)のお話です。焼きたてさくさくのコラムを、どうぞ召し上がれ。

  mille books

プロフィール
バックナンバー

#02「対 気分?」

相手の立場になって考える。
たとえ相手になりきれなくても、少しは相手のことを理解できる気がした。

4歳の頃から鍵っ子だった私は、幼稚園から帰ると、
花や植木、ぬいぐるみはもちろんのこと、家の中のあらゆるものに、
「ただいま!」と声をかけて会話をした。
それらは、静かに私の帰りを温かく迎えてくれていた・・・はず。
そんな幼少期を過ごしたものだから、物と者に対する感覚の境目が薄れてしまったのかもしれない。
物も者もモノ、だと。

自分がまさか今のような食にまつわる仕事につくなんて、思いもしなかった頃のこと。

物も者もモノ、という考えを基本に作品制作をした美術大学の卒業制作のテーマとして、
人間にはほとんど感じることのない食べられるという感覚を、相手の立場になって考えてみようと思った。

大学に入ってから呼ばれるようになった「さんまゆ」という呼び名には、とても愛着があった。
そこから、自他共によく連想されたのは「さんま」である。
じゃあ「さんま」になろう。
そうだ、せっかくだから、お店の人が作る「さんま定食」になってみよう!
というのが、立場となる相手を決める思考の、大まかな回路であるのだが、
ここはひとつ、さらりと読み過ごしていただきたいところ。

それから数ヶ月の間、「さんま定食」の立場になってみるために、
私の頭の中は、「さんま定食」のことでいっぱいだった。
後にも先にも、あんなに「さんま定食」について考えたことはないと思う。
『対 気分 〜さんま定食の場合〜』と題した卒業制作は、
木や布やプラスチック、ゴムなど、あらゆる素材を用いて、
全長3メートル近くある、人が中に入れる仕組みの巨大なさんまの塩焼きを中心に、
定食になるためのご飯やお味噌汁、たくあん、大根おろしなども拵えた。
いかにリアルに料理するかということに昼夜没頭し、自分の身長の倍ほどもあるさんまに悪戦苦闘した。
傍から見れば、なんとも滑稽な姿であっただろう。

けれども、出来上がった巨大な「さんま定食」は、私の意志とは裏腹に明後日の方を向いていた。
けれども、その明後日の方向で、私の中の何かがゆっくりと動き出していたのだ。

作ることで表現し続けたいと思う気持ちと、作り出した物に対する責任を、
どのように果たせばいいのだろうか?
フラフラと長くも短くも数年考えた末に出た結論は、
『食を通して物づくりを表現すること』だった。

「さんま定食」と向き合った、あの香ばしくも脂ののった日々が、
今のTOSAKANMURI FOODSを形成しているということか・・・?

あぁ、「さんま定食」様。
食べてしまいたいほど、あなたが愛しい。

 

【お知らせ】
毎月1回、TOSAKANMURI FOODSのお菓子がオルネ ド フォイユに届きます!
入荷日時やメニューについては、イベント案内のページショップニュースのブログで随時お知らせしてまいります。

 

 

PROFILE
三田 真由 MAYU SANDA
TOSAKANMURI FOODS主宰/フードクリエーター/ブーランジェ(パン職人)
1974年、京都府出身。武蔵野美術大学 空間演出デザイン学科 ファッションデザインコース卒業、同大学院修了。舞台美術の小道具制作工房を経て、「食を通して物づくりを表現すること」を目標に、都内のパン屋にて5年間修行。2006年、TOSAKANMURI FOODSを始動。2007年、活動の場を広げるためアトリエを移転し、現在に至る。
ホームページ http://www.tosakanmuri.com/

 

 

コラムトップに戻る

SHOP INFO
COLUMN
BLOG