第1話 不動前のサグラダ・ファミリア!?

店主・谷が、少し変わった家づくりをしています。

それはいわば「未完成」の家に住みながら自分で手を動かし、DIYをして家をつくるというもの。

その様子はInstagram(@orne_ie)でも紹介されています。
引っ越してから約2年が経ちますが、まだ完成のメドは立っていないそう。

インテリアショップの店主がつくるお家ってどんなだろう?
なんで非効率とも思える家づくりをしているの?
そんな好奇心から、その家づくりを覗いてみたいと思いました。

聞き手はスタッフのトミタ。
「谷ならでは」の家づくりから何が見えてくるでしょう。


オルネ ド フォイユの店主。
24歳で渡仏、帰国後の2004年にオルネ ド フォイユを青山にオープン。
手を動かすことが大好きで、不動前店や事務所も自分たちで作りあげた。

トミタ
当店勤務の傍ら、住宅メーカーでインテリアコーディネーターとしても働く。
普段からお客さまの生の声をたくさん聞いているため、谷からよく「お客さまの心の声」に関する質問攻めをされている。

「不動前のサグラダ・ファミリア」といわれた店

—— 谷さんを象徴するエピソードが「不動前のサグラダ・ファミリア」だと思うんですが。

トミタ サグラダ・ファミリアですか…!?

 恥ずかしいんですけど、この不動前の店は、オープン前に大工さんたちから「不動前のサグラダ・ファミリア」と言われていました。

—— 完成が見えないから、サグラダ・ファミリアと(笑)。

 青山から移転した新しいお店を、あーでもないこーでもないと言いながらつくっていたので、どうにも時間がかかってしまって。
手を動かしながらじゃないと分からない部分がいっぱいあって、最初に予定していたオープン日には全然間に合わず延期したりもしました。
オープン直前はスタッフみんなで深夜まで作業する日々で、ペンキを一度も触ったことがないスタッフも防護服を着て、壁を白く塗ったりしてましたね。

トミタ なるほど、そんな逸話が(笑)。

—— 谷さんは2021年にご自宅兼スタジオを新築されて、住みながら少しづつご自身で手を加えていく様子をInstagramのアカウント「オルネ ド フォイユの家づくり」(@orne_ie)でも発信されています。
建物の引き渡しからはもうすぐ2年が経ちますが、まだまだ日々進化中ですね。

 その通りです。試行錯誤しながら、ゆっくり進めているって感じです。

トミタ インテリア紹介でもなく、住宅メーカー系の「家アカウント」でもない、随所に谷さんらしさやオルネの空気感を感じるアカウントで、実は結構前からこっそり見守っています…!
今日は谷さんの家づくりが「#建てると住むの間」に辿り着くまでのお話を聞かせていただきたいと思います。

DIYとの出会いはフランスだった!

トミタ 不動前店の中にも、谷さんが作った内装や収納、什器が沢山ありますよね。「素敵だな」と思うと、職業病でどこの商品だろう?とついチェックしてしまうのですが、ここだと大体が谷さん印です。
私の中ではすっかり「DIY名人」的なイメージなのですが、きっかけはどこにあったのでしょうか?

谷 家まわりのDIYを始めたのはフランスに住んでいたときですね。
最初住んだのは13平米の家だったんですけど、狭いし、虫は出るしで、3ヶ月ですぐに出ました。
その後、元々知り合いが住んでいたところへ引っ越したんですけど、フランス人って引っ越す時にほとんどのものを持っていっちゃうんですよ。電球1個まで、全部。
だから僕が引っ越した時も、床はボロボロ、電気も配線だけがピョロっと出ているような状態でしたね。

トミタ フランスは水回りなどの大掛かりなDIYもなるべく自分達でするというイメージがありますが、日本だと考えられない状況ですよね。

谷 そうですね。そもそも人件費が高い国なので、安く仕上げようと思うと自分の手を動かすしかない面もあるかな。

トミタ ちょっと意外なスタートでした。最初からDIYに興味があったわけではなくて、どちらかというと必要に迫られた部分があったんですね。

谷 そうなんですよ。大家さんからは補償金免除する代わりに自分で色々直していいよって言われたんだけど…まず電気をどうしたらいいかが怖かったなぁ。
今でこそ調べようと思えばインターネットでできるけど、その頃ネットはないし、結局見よう見まねで照明を取り付けて。クオリティとしては低かったけど、そこから色々と自分で手を入れるようになりました。

谷 パリのすごい中心地にBHBっていうお店があって、日本で例えると、渋谷にコーナン的なホームセンターがあるんですよ。
あんまり想像できないでしょ?そういうお店がパリの中心地にある時点で、DIYが文化に根付いているのかなぁと思いますね。
そこで小綺麗なマダムたちや若い人が、普通に材料を買っている光景に最初はびっくりしました。基本的に家のものはなんでも自分で買う、自分で選ぶみたいな人がすごく多かったなぁ。

トミタ すごく刺激を受けそうな環境ですね!フランスから帰国した後は鎌倉に住まれていたんですよね?

谷 都会の真ん中にいきなり行くより、古い街で自然があるところがいいと言うことで鎌倉にしました。
最初は極楽寺駅から歩いて7-8分の、周りに家も2軒しかない山の上に引っ越してから、住みたいところを腰据えて探して、海の近くに中古の戸建を買いました。

トミタ 鎌倉のお家も、自然に自分達の暮らしに合わせて手を入れるようになったのでしょうか?

谷 うん。床の素材、壁紙、照明がまず気に入らなくて、そこからやったかな(笑)。

トミタ ほぼ全部ですね(笑)。

谷 購入したのは2-30年前の建売住宅だったんだけど、なかなか味気なくて。
床張り替えて、壁は結構な面積を漆喰にしてもらって。壁に塗るペンキも今でこそホームセンターに色んな種類が揃っているけど、ペンキ専門メーカーに注文しないと手に入らない時代でした。

トミタ 確かに最近はペンキも素敵なものを手に入れやすくなりましたが、少し前だと難しかったですよね。材料の手に入れ易さからも日本とフランスで違いを感じますね。

 

つづく>>

2023.4.19

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