第2話 家づくりは「白い箱」からはじまった!
Google Mapで緑を探した土地探し。
トミタ フランス、鎌倉、と既存の住宅に手を加えながら住んでみて、ついに1から現在のお家を建てることになったのですよね?
谷 そうなんです。鎌倉の家には、リフォームの限界を感じていました。
内装には手を入れられたのですが、やっぱり耐震の構造計算がちゃんとされているので構造を変えるというのがどうしても難しくて。
例えば天井高をもう少し稼ぎたいとか、壁を抜こうと思っても、むやみには壊せないんですよ。
水回りや間取りがガッチリ決まっていると、リフォームするにしても自由度がすごく下がってしまって、なかなか思うようにできない悔しさがあったので、新しく建てたいという気持ちになりました。
トミタ なるほど。お家づくりはどんなことからスタートしましたか?
谷 建てると決めたら早めに鎌倉の家は売ってしまって、賃貸に住みながら落ち着いて土地探しを始めました。
土地に関しては隣近所と壁が近すぎなくて、外に出た時にあんまり目が合わないようなプライベート感を重視しました。
あとはなるべく緑が近くに欲しかったので、Google Mapでどこに緑があるかを探していましたね。
トミタ Google Map!俯瞰で周辺の環境が見えるのでわかりやすいですね!
谷 お寺や古墳の周り、公園は緑があるんですよ。だけど、近くに家を建てられるような土地はなかなかなくて、いろんなところを見に行きましたが、どこもピンと来なかったんです。
今の土地は、妻と2人で「こんなところに住めたらいいよね」と夢のような感じの出会いでした。
「白い箱」のイメージから始まった家づくり。
—— 新しいお家を建てようと思ったときに、理想としたのは「南向きの白い箱状のもの」と聞きました。思い描いたお家の形はありましたか?
谷 最初は正直欲がなくて、白い箱状のものがあればいいやって思っていました。
お店も一緒で、箱状のものさえあればなんとかなるっていう発想があって。
トミタ すごく潔いですね!鎌倉のお家で解消できなかった部分がクリアできていれば、中は自分達の力で変えていけるだろうという、経験が積み重なってこそですね。
土地が決まって、さあ建築家さんを探そうと…その時点で生活動線や間取りのイメージもされていましたか?
谷 まだ全然!理想は明るい光が入る家と、天井を高くしたいぐらいでした。
あとは外からの見た目より、中の居心地の良さを重視したいというのもあったかな。建築家さんと色々なアイディアをキャッチボールして作りあげたいと思っていました。
どういう空間が心地いいかを重視。
行き着いたのは模型づくり。
トミタ 設計の部分になると、イメージを要望として表すのが難しいと感じられる方も多いかと思うのですが、谷さんはどのように進めていかれたのでしょうか?
谷 どういう空間にいると心地いいか、を考えることからはじめようと思って、まずはPinterest(ピンタレスト)で写真をワーっと集めてみました。
良いなと感じる写真を並べてみて、自分がどういう空間にいるとテンションが上がったり、逆に落ち着いたりするのか、その要素ってなんだろうっていうことをひたすら考えていました。
あとは、僕が希望している言葉にならない部分を汲み取ってくれる人がいるのか…建築家さんを探して、話をしに行った感じです。
トミタ けれど、その建築家さん探しがかなり難航したと…
谷 そうなんですよ…。もちろん予算もあるので、それを提示すると「小さい家の方がいいですね」と言われたり。南向きがいいと言っても北向きをおすすめされたり、方向性が違うこともあって本当に難しかったです。
4人お会いしたんですけど、うまくいかなくて、ちょっと絶望しました。
これはもうどうしようとなって、妻と2人で模型をつくることにしたんです。
トミタ やっぱりそこで谷さんは手を動かしてみるんですね。
谷 そう。それで作った模型を持っていって、受けてくれるところが見つかるまではじっくり回ろうと決めました。
その後インターネットで探した建築家さんに頼みに言ったら、割とスムーズにいいですよ、と受けてもらえたんですよ。
妻・キムさんと二人三脚
間取りは暮らしに合わせて、
居住空間をコンパクトにまとめる。
トミタ 自分にとって心地よい空間とは何かを考えながら、ついに建築家さんが決定した谷さん邸。最終的に自分で模型を作れたということは、最初は漠然としていたイメージを、かなり具体化できるようになっていたんですね!
谷 そうですね。1階は社内で使っている撮影スタジオになっています。まだ工事中ですけど、ゆくゆくは社外にも貸したいとも思っていて。物件の差別化という意味でも、なるべく1階は改装しやすいように計画しました。
1階スタジオは外から光が差し込み、クリーンな印象
トミタ 居住空間は2階に集約されているのですね。
谷 家に着くまでに結構階段を登るので、家にいる間は上下運動をなくして体への負担を減らしたかったんです。2階に居住空間を持ってきたのはそこに理由があるかな。
トミタ 広さはどれぐらいですか?
谷 居住空間が85平米ぐらいかな。割とぎゅぎゅっと、子供部屋も6畳ぐらいです。今回はリビングをいかに広く取るかにこだわりました。
塗装前
塗装後。印象がガラリと変わりました
トミタ 確かに、必要な要素がぎゅっと詰まっていますね。でも回遊性もあって、すごく住みやすそう!思わずテンションが上がってしまいます!なぜリビングを第一優先にされたのでしょう?
谷 単純にリビングにいる時間が長いからですね。
家帰ってすぐ自分の部屋に篭るのはコミュニケーションが取れないし、あんまり良くないなと思っています。
「自分たちに暮らしやすい」を大切にして間取りを決める。
トミタ 2階は子供部屋と寝室とリビング、キッチンですか?
谷 そうです。それとお風呂場があるだけ。一般的には2LDKっていうんですかね。
トミタ 新築戸建や、それ以外の間取りを見ていても、少し前まではLDK以外の部屋をある程度の広さで均一にとる作りが一般的だったように思います。
注文住宅だと最近は暮らし方に合わせてリビングをより大きくとって、その分寝室や子供部屋はコンパクトにするとか、取捨選択をするようなプランも増えているように感じます。
谷 これまで賃貸に住んでみた経験から分かることも多いよね。こんな広さいらないよね、とか、間取りこれいらないよね、とか。
トミタ そう!自分自身の暮らしの経験値ってとても大事だと思います。広さとか、高さとかの感じ方は、他の人の暮らしや、情報だけを見ても分からない部分ですよね。
谷 「自分たちが暮らしやすい」って人によって結構違いますよね。うちも子供がもっといたら違っただろうし。
—— 模型をつくることで理想を形にし、間取りも決めた谷さん。
設計は専門外のことだからと他人任せにせず、自分で調べ、手をうごかす。
「これだ!」と思えるまでは妥協しないことって、やっぱり大切なのかもしれません。
2023.4.19