鹿児島から美味しいお便り
〜Hummeの風景〜
photo by Humme
鹿児島県出水市にあるパン屋さん「Humme 」。
田畑を横目に住宅街への細い道を進んでいくと、古民家カフェを思わせる佇まいの1軒のお店。
小ぢんまりとした「Humme」と書かれた手書きの案内板が迎えてくれます。
実は店主の松澤さん、東京から出水市に移住し、築約50年の空き家をセルフリノベーションで改装されたとのこと。
そんな松澤さんにパンのこと、リノベーションのことなどをお伺いしました。
Humme
Humme は鹿児島県出水市にある、パンとお菓子のお店。 読み方は “はむ”。“食む“が由来です。 思わず頬張りたくなるような、ゆっくりと噛み締めたくなるような、そういうモノを作りたいという願いからHumme と名付けられました。
Instagram | @hidekuni.mw
豊かな自然に囲まれて
Hummeがある、鹿児島県出水市はどんなところなのでしょうか?
松澤さん(以下、敬称略):山海川に囲まれた平野で、自然豊かな場所です。海産物が豊富で、近隣には天草や阿久根といった日本でも有数の漁業が盛んな場所でもあります。
松澤:また山も近く、眺めるのも美しいですが、山の下流の川も良い場所です。夏に泳いだのですが、水も冷たく綺麗で、とっても気持ち良かったです。
そして何より人がいません!笑
プライベート川辺リゾートスポットでもあります。
空間を自らの手で作り上げる
築約50年の空き家をセルフリノベーションで改装された松澤さん。実際にどんな風に生まれ変わったのでしょうか?
before
after
松澤:洗面台は、古いものは取り払い、新たに一から造作しました。
流しを大きなしっかりしたものにし、粉がつく衣類を下洗いする場所としても使いたかったので、枠もかなり頑丈に作りました。
図を描きながら、ああでもないこうでもないと作り上げたのは良い思い出です。
タイル貼りも地味に大変で、思いの詰まったこだわりポイントでもあります。
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after
松澤:休憩室兼寝室は、改装前は古い和室でした。
開放感のある、風の通り抜けるような空間にしたく、天井を高くし、壁の色も変え、床も畳からフローリングに張り替えました。なかなかに大変な作業ではありましたが、ゆっくり休憩したくなるような良い空間にできたと思います。
窓のL字コーナーが特に好きなところです。
before
after
松澤:厨房の作業スペースは、元々かなり薄暗い和室でした。
目指したのは、ここで作業したくなるような場所。
一番過ごす場所でもあるので、そこに居たくなるような場所にしました。
天井を剥がすと、煤で黒くなった立派な梁が現れ、それを活かしたいとそこに合わせて天井を張りました。簡単に高くできると思いきや、昔の家は柱の木も真っ直ぐではなく、かなり大変な作業でした。ここだけで1ヶ月近く要したため、苦労した分、思い出深い場所でもあります。
売り場からもここは見えるのですが、皆様良い空間とおっしゃってくださいます。
Hummeの美味しいパンたち
インスタグラムを見るだけでお腹が空いてしまいそうなパンたち。一体どんなパンが人気なんでしょうか?
人気のカルダモンロール!
季節のフルーツを使用したパン。
松澤:Humme の人気のパンはカルダモンロールです。
スパイスの女王と呼ばれるカルダモンをたっぷり使用し、一口食べればカルダモンの爽やかな香りが口いっぱいに広がるパンです。
あとは旬の野菜や果物を使用した季節のパンが人気で、毎回ラインナップを変えています。
松澤:定番のパンとお菓子は、カンパーニュとスコーン、カヌレです。
実はショップスタッフの一人と店主の松澤さんが仲良く、オルネで出張パン屋さんができたら面白いかも!と話していたのですが、その矢先にコロナが流行ってしまい実現できず…。
出水市に移住されたものの、せっかくのご縁だし、何かご一緒できたらという想いから、12月に不動前店でシュトーレンを販売することになりました!
そこで、松澤さんにどんなシュトーレンか教えて頂きました!
松澤:当店は2021年4月にオープンしたのですが、シュトーレンはそこからの歩みを詰め込みたく、これまでパンやお菓子で使用してきた出水産、鹿児島産の果物で作った自家製ドライフルーツを奄美の黒糖焼酎に漬け込み、カルダモンとクローブと3種のナッツと共に生地に混ぜ込みました。
購入後すぐはほのかに焼酎が香る軽い食感。日を追うごとに焼酎も果物もナッツも馴染み、しっとりとした味わいへと変化します。
薄くスライスし、少しずつお楽しみください。
松澤:また、今回は鹿児島県霧島市のマルマメン工房様の小麦を使用しています。
農薬も化学肥料も使わず、大変大きな土地で麦と大豆を一人で育てられています。
ものすごく味が濃くて香り豊かな小麦で、Humme では多くのパンでこちらの小麦を使用しております。焼いた当日よりも翌日、翌日よりも翌々日と熟成が進み、風味が増し増していき、大変美味しい小麦です。
小麦は粉にすると酸化が進むため、全粒粉として使用するときは店舗の製粉機で都度挽き、新鮮なうちに使用するようにしています。
シュトーレンはクリスマスまで日々を楽しむために、日々少しずつ食べるもの。日々風味が増していくこの小麦はシュトーレンにも向いていると思います。
ドライフルーツやナッツなどの具に注目されがちなシュトーレンですが、ぜひ生地の美味しさにも注目してみて欲しいです。
これからのHummeが目指す場所
先日Hummeでは、店主の松澤さんの奥様とその妹さんによるアパレルブランド「FUSA」のお披露目会という形で営業されました。
そこは「パン屋さん」という枠にとらわれることのない自由な場所。
これからHummeはどのようなお店になっていくのでしょうか?
時にはパン屋さん、時にはお洋服屋さん
松澤:Humme という場所や空間では、田舎であるからこそできる暮らしの楽しさや豊かさを体現していく一つの場所にしていきたいと考えています。
それはパンや服といった、実際にお客様が触れ目にするものだけでなく、私たち自身の働き方や暮らし方でも伝えていけたらと思っています。
楽しそうに暮らしている人たちがいる、その人たちが店をやっている、Humme に行けば何かあるかも、と。
生活のちょっとした楽しみやワクワク感を、ここに暮らしている方達に少しでも感じてもらえる場所に出来たら嬉しいです。
パン屋を超えて「明日が楽しみになる場所」をつくっていきたいと考えています。
2021.11.22