リネンのイメージと真逆だった件。「fog linen work」オーナー・関根由美子さん〈前編〉
「自分の好きな世界観」や「自分らしさ」を大切にして暮らす方の住まいにスポットをあてる企画「おうち、おじゃまします」。当店のオーナー・谷が、その方のお宅へ伺い、家や暮らしに対するこだわりや考え方についてお話をお聞きします。
第1回は「fog linen work」オーナー・関根由美子さんです。前編では、リビング&ダイニングをご案内いただきます。
関根さんのお宅は記事中の動画でもご覧いただけます。
関根 由美子さん
岩手県盛岡市出身。リネンのオリジナル製品、国内外からセレクトした生活雑貨を扱う「fog linen work(フォグリネンワーク)」代表。ほかに、南インドの布を使ったファッション雑貨ブランド「miiThaaii(ミーターイー)」も主宰。自身のスタイルブック『Simplicity at Home』(Chronicle Books刊)が出版されるなど活動は多岐にわたる。
オンラインショップ:fog linen work|フォグリネンワーク
※下北沢にある店舗「fog」は現在臨時休業中。
関根さんの「おうち」
1F ゲストルーム、駐車場
2F リビング、ダイニング、キッチン
3F ベッドルーム、書斎、バス&トイレ
屋上
家を建てた理由は「素敵なゲストルームを作りたい!」
―現在、建築家の夫・大橋さんが設計した都内の一軒家で、夫婦+愛猫と共に暮らす関根さん。谷とは日頃からさまざまな情報交換をしたり、過去にはインドへ一緒に買い付けに行ったりしたこともある間柄です。まずは、2階のリビング&ダイニングにご案内いただきました。
谷:家具や物があまり置かれていなくて、とても広々、すっきりとした空間ですね。関根さん、実は買い物欲があまりないタイプですか?
関根さん(以下、敬称略):割とそうかもしれません。仕事でたくさん買い付けているからかな、買い物欲は仕事で満たされているのかも(笑)。
谷:とても素敵なお宅ですが、そもそもご自宅を建てようと思われたきっかけは…?
関根:(コロナ禍以前は)海外の知人や友人が日本に来て、わが家に泊まることが多かったので、そんなときに彼らが快適に過ごせるゲストルームがあるといいなぁと思ったのがきっかけです。私も、海外に行ったときに素敵なゲストルームに泊めていただくことが多くて。
谷:なるほど。
関根:以前住んでいた家のゲストルームは、6畳一間でとても狭かったんです。あるとき、親子で遊びに来てくれた友人のお子さんが、「こんな狭いところに泊まるのか…」と泣き出してしまったことがあって。そのときは私もとても申し訳なく、悲しくなってしまいました…。
こちらが現在のゲストルーム。後編で詳しくご紹介します
谷:確かに、子どもに泣かれてしまうのはツライ…。関根さんの旦那様は建築家ですよね。家を建てるにあたり、相談や計画もスムーズだったのでは?
関根:そうですね。ただ、家に対する要望って実はあまり多くなくて、とりあえず “箱型”でつくってもらえばOKかなって。箱型なら間取りは後からどうにでもなるし、壁も塗らなくていいや、後からいくらでも塗れるし、という感じ(笑)。
友人たちと、楽しく集えるキッチン
谷:それにしても、ダイニングから見えるステンレスのキッチン、本当にかっこいいです!
関根:ふふ。自慢のキッチンです(笑)。両サイドの壁に隙間なくぴったりと収まっています。
―この家を設計したご主人の大橋渉さんにも、お話を伺うことに。
大橋さん(以下、敬称略):このステンレスのキッチンは、リビング&ダイニングの空間を引き締める役割をしています。壁はコンクリートでラフな感じに仕上げているのですが、キッチンもその感じにしてしまうと、由美子さんのキャラクターと合わない気がしました。
約4.4 mの長さで、ゆったりとした作りのキッチン。
谷:なるほど。今はアイランドキッチンが流行っていますが、こういうキッチンもいいですね。
大橋:実は当初、アイランドキッチンにする案もありました。ただ、動線を考えたときに、現状のカタチがベストだったんです。わが家では、夫婦で食事づくりをすることが多いのですが、このキッチンなら、材料を取り出す、洗う、切る、火にかけて調理をする…という一連の作業を2人でも行いやすいんです。
谷:確かに。体がぶつかったりすることもなさそうです。
関根:友人4~5人が遊びに来たときも、皆で料理できたのが良かったですね。
大橋:もちろん、アイランドキッチンにはアイランドキッチンの良さもありますけどね。洗い物が溜まっているところや、作業後の状態を見られたくないという方にはやはりアイランドキッチンがいいと思いますし。
谷:使い手がどの部分を重視するのかによる、ということですね。
窓から気持ちのいい光が差し込む。冷蔵庫、食器棚はキッチンの左脇のパントリー内にある。
コップやうつわがきれいに並ぶ食器棚。扉がなく取り出しやすい。
―キッチンの引き出しを拝見。
谷:うわぁ、素敵なうつわがたくさん!この白いカップ、いい感じのぽってり感。僕、こういうの好きなんですよね~。
関根:それはフランスのボルドーで買ったものですね。このたくさんある中からフランスのものを真っ先に見つけるのはさすが谷さん(笑)。
関根さんがボルドーで買ったというカップ。ネコの可愛いワイン栓も発見!
引き出しに収納されているカトラリーやしゃもじ。
床も、空間の引き締めにひと役
谷:ところで、床もいいですね。
関根:キッチンに続き、わが家の自慢のポイントです(笑)。並べた板と板の間に隙間がないので、ゴミやほこりが溜まっていかないんです。あと、特別なコーティングがしてあるそうで、ワックスがけをしなくてもOK。油やワインをこぼしても、染み込んでいかないのはありがたいですね。
隙間のない美しい床。素材はオーク。
大橋:先ほどキッチンが空間を引き締めている、とお話しましたが、ぴっちりと隙間のないこの床も、同じく空間を引き締める役割をしてくれています。
谷:そうなのですね。キッチンと床はコンクリートの壁の風合いともすごく合っていますよね。さりげなく、計算がしっかりと行き届いた空間…、まさに理想です。
リビングの一角にある、関根さんのワーキングスペース。飾られているゴッホの絵は、関根さんのお父様作。
関根さんが大学生のときから使っている電話。今でも、ご実家にかける際などに使っているのだそう。
家のいたるところにお花が飾られている。モロッコ製のテーブルは当店で購入していただいたもの(脚部分は、関根さんがカスタマイズしています)。
後半へつづく
writing/rie suzuki
photo/satoshi shirahama