土と対話する

Interview
入江 佑子

photo by YUKO IRIE

独特の有機的なフォルムで、まるで自然界の造形物のように柔らかな雰囲気をまとう入江佑子さんの作品。ご自身の作品や制作への思い、お気に入りの「Arts&Crafts」についてうかがいました。

日常生活の中で、土に触れて生きる

― 作家として活動を始めたきっかけを教えてください。

表現することやアートに興味があったので、美術大学に進学して陶芸を専攻しました。
日常生活の中で土に触れながら、どのように今の社会と関わっていけるか、その時その時の自分の思いをかたちにしていき、小さな展示会やイベント出店などをかさねていくうちに、作家としての今の表現やスタイルができていきました。

 

自然物のように心地よい造形がポイントの器たち。作品は手捻りや型で成形される。

― 作家として最初に制作したアイテムを教えてください。

はじめの頃は、鮮やかなブルーのアクセサリーやオブジェなどを作っていました。
様々なアイテムを作っていく中で素材の可能性を試したり、新しい表現を取り入れたりしながら日々変化しています。
今の作品とは色彩やモチーフが違いますが、表現したい思いや感じたことを作品として作り上げていくベーシックな部分はあまり変わっていないように思います。

 

器や花器に加えて、スプーンも人気アイテムの一つ。さまざまなモチーフは見た目にも楽しい。

軽やかで心地よい気分で土と対話する

― 制作するうえでのインスピレーション、大切にされていることは何ですか?

自然界のものに触れることで不思議と気持ちも自然にリセットされる、そんな軽やかな心地よい気分をいつも保ちながら制作に向かうようにしています。
あれこれ先に考えたりしないで、ただ目の前にある一点一点に集中して土と対話していくという感じです。

 

自宅の裏山は森になっていて、日々の散歩コースになっている。

視覚だけでなく触覚も大切に

― 制作する上で大変なこと、苦労していることはありますか?

「観る」ということだけではなく、触れた時の手触りや質感など、作品を手に取った時に感じる「感覚」には気を使うし、難しいなと感じることがあります。

 

アートピースの花器。陶土には海の砂が混ぜ込まれていて、独特の手触りが特徴。

― 制作をされていて「楽しい」「嬉しい」と思う瞬間はどんな時ですか?

とにかく毎日、土に触れて生きていることに感謝です。
それが形となり、作品を通して様々な人と繋がることができれば幸せです。

陶器の中に砂が仕込まれた「sound stone」。耳元で振ると砂の音を感じる。自由な発想で表現する入江さんらしい作品。

作品は、自由気ままに楽しんで

― ご自身の作品をどう楽しんで欲しいですか?

自由気ままに、ですね。
「手作りのモノ」として自由に使ったり楽しんでもらえたら、それだけで嬉しく思います。

森と同様に海もインスピレーションを受ける場所。五感で自然の魅力に触れる。


わたしのArts&Crafts

インドで実際に使われていたスパイスを磨り潰すためのもので、石のかたまりを削り出して作られています。
横幅33cm重量は約8kgあって、潰す用途として使ってはいないのですが、リビングにどっしりと鎮座しています。
こういう使い込まれた道具としてのうつわを見ると、感じるものがあります。

 

入江 佑子|YUKO IRIE

1980年京都生まれ。
京都造形芸術大学にて陶芸を学び、2015年にdona ceramic studioをスタート。decorate-origin-nature-art(=dona)をテーマに陶器の新たな可能性を追求し、器や花器、オブジェやアクセサリーなど幅広い作品を制作。

Instagram|@donaceramicstudio

2022.11.18

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