あなたにとっての、名もなきお気に入り-苔むす木工・鈴木智浩さん-

オブジェやインテリア作品を制作している「苔むす木工」の鈴木智浩さん。 
2021年には拠点と東京から京都に移して、活動されています。

オルネでは、木彫で作られた動物オブジェのシリーズ、“obscure animals”をお取り扱いしております。

ざっくりとした彫りの跡を残しながら、ふっくらと立体的に形作られた動物たち。
「いたりいなかったりする動物」をモチーフにしていて、あるものは動物の特徴をリアルにとらえ、またあるものは抽象的な趣を見せます。

卓上のサイズながら、その独特の存在感や世界感は立派なアート作品。神秘的な姿に見入ったり、愛らしい佇まいにほっこりしたり、ぜひ身近に置いて楽しんで頂きたい作品です。

 

鈴木智浩|苔むす木工 

1991年静岡県生まれ。
武蔵野美術大学基礎デザイン学科卒業後、木工を始める。
家具工房での修行期間を経て、2016年より東京を拠点に作家活動を開始。
オブジェから家具まで、木工作品を制作。

現在は京都に拠点を移し、活動中。

 

鈴木智浩さんインタビュー

「この子は何しているんだろう?」「きっとこんな気持ちなんだろうなあ」と想像を膨らませてしまうような自由さを感じる鈴木さんの作品。


木工作家になるきっかけは何だったのでしょうか?どのように製作されているのでしょうか?

今回は鈴木さんに色々とお話をお伺いしました!

 

木工作家さんになるきっかけを教えてください。

鈴木さん(以下、敬称略):大学でデザインを専攻していたのですが、単純に手を動かしてなにかをつくる、ということのほうが好きだったこともあり、もっとシンプルに、自分でものを作って売る、という生き方がしたいと思うようになりました。 あと植物が好きだったので、材料としてというよりかは、「木」という植物に触れることができるのが楽しくて、木工をはじめました。

 

どのように製作されているのですか?

鈴木:まずは機械をつかって切り出し、荒削りをします。そこからはすべて手作業で、彫刻刀やのみ、鉋などをつかって削っていきます。非常にアナログな製作をしています。

 

犬やクマなどみんなが知っている動物から、ニアラやターキンなど、あまり馴染みのない動物、実在しない動物まで幅広く製作されていますが、どういうきっかけで「この動物を作ろう」って思うのですか?

鈴木:動物園に行った時とか、本や映像なんかでも、名前を聞いたことのない動物を見た時は、なにそれ?ってワクワクしません? そんな流れで、つくってみたいなあとなることはあります。

でも基本的には、この動物をつくろう!と決めてつくるわけではなくて、なんとなく心地いいシルエットを紙にいろいろ書いていて、「あ、なんかこれあれっぽいな」とか思いながら、形に落とし込んでいます。中には落とし込めずに、なにこれ?のまま完成するものもいますが、僕は割とそういうものの方が好きだったりします。

 

 

製作する上でこだわっていることはありますか?

鈴木:ものづくりっていうのは基本的にひとりよがりなところがあるので、謙虚にいようと心がけています。笑

理想は、どっかの古びたお土産物やさんの隅の方にあるデッドストックみたいな人形とか、その辺の河原に落ちてる石とか、折れて錆びてる釘とか。 それらを、ふいに見つけて、なぜか惹かれて、拾って帰る。 誰かにとっての、そんな名もなきお気に入りになれたらいいな、と思って作品を作っています。

 

どのような木材で製作されているのですか?

鈴木:木材はクルミを主に使っています。 クルミは比較的軟質で加工がしやすいので、よく使います。
あとはトチ、ヒバ、クリ、サクラ、ケヤキなんかも使います。 それぞれに色味とか質感、重さなど全然違うので、用途にあわせて使い分けています。

木材屋さんに行くと、ほんとにたくさんの種類があるので、見たことないのとか変な木目のとか見つけると買ってしまいます。動物の作品の台とかにそれらが使われてたりします。

 

尻尾が紐になっていたり、羽がブリキでできていたり、異素材と組み合わせているものもあって、すごく面白いと思いました!このようなアイディアはどこからくるのですか?

鈴木:落ちてるものを拾うのが、好きというか、拾ってしまうんです。

なんかこの鉄の錆びいいなーとか、この枝振り最高、とか思いながら、捨てられている鉄くずとかおちてる植物とかをよく集めているんです。 それを、ちょっとアクセントに使わせてもらっています。これは、ひとりよがりです。笑

 

今にも動き出しそう、そんな予感。

映画『ナイト ミュージアム』のように、実は夜動いてたりして、なんて思わず想像してしまうような作品たち。それは鈴木さんならではの、自由な感性から生み出されていました。

 

例えば、「ポツネン」と名付けられた動物の親子。まあるい背中に大きな尻尾。
この子は群れでワイワイしているより、一人でムシャムシャとごはんを食べている様子が目に浮かびました。
のそりのそりと、ゆっくり歩き出しそうですよね。

 

ゆらゆら揺れるモビール。
それぞれ海や森が広がっているようなイメージが浮かびますよね。

モビールから飛び出して、クジラがふよふよと空中を泳ぎだすかもしれない。
アリクイは枝からぴょんっと飛び移って、お部屋の棚をトコトコ歩き出すかもしれない。

そんな妄想をしてみるのも面白いですよ(笑)

 

不動前店で個展を開催した時は、まるで小さな動物園のようでした。

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