10「春の息吹、イースターの季節」
ドイツで本格的な春の到来を感じられるのが、イースター(復活祭)の頃。この時期になると、屋外のビアガーデンやカフェのテラスで日差しを楽しむ人々の姿が見られるようになり、街全体が「復活」したかのような、開放的な空気に包まれます。
イースターは、十字架にかけられて亡くなったイエス・キリストが3日目に復活したことを祝う、キリスト教ではとても大切な祝日です。
日本では「庭に隠した卵を子どもたちが探すエッグハント」や「カラフルな卵やうさぎの飾りつけ」といった、かわいらしいイメージで知られているかもしれませんが、実際にはどんな祝日なのか、曖昧な方も多いのではないでしょうか。
実際、ドイツで暮らしていても、イースターはちょっとつかみどころのない祝日です。春の節目として、みんなそれなりに意識はしているけれど、街を挙げてのお祭りや具体的な行事があまりないため、クリスマスほどのイベント感はないのです。
2月の終わり頃から、ウサギや卵をモチーフにしたチョコレートが店頭に並び始め、ショーウィンドウや広告などにもウサギや卵が登場しはじめます。3月は静かに、少しずつ春の気分が高まっていきます。
カトリック色の強いスペインやイタリアなどの南欧では、聖週間(イースター前の1週間)に宗教行列などの盛大なお祭りが行われますが、ドイツではそれほど大規模なお祭りは見かけません。
イースター当日には、家族で集まって食卓を囲んだり、子どもたちは庭や公園でエッグハントを楽しんだり。もちろん敬虔な信者は教会を訪れます(このあたりはイメージそのままですね)。
保育園の窓に貼られた切り絵
一方で、国内外へバカンスに出かける人も少なくありません。聖金曜日から翌月曜日までが連休となり、学校も長期休暇に入るため、イースターを単に「春休み」としてとらえている人の方が、むしろ多いかもしれません。
そもそもイースターは、キリスト教が広まる以前のケルトやゲルマンの春を祝う風習と混じり合ってできたものだと言われています。キリスト教的な意味合いだけでなく、明るい光や再生する自然といった「春の息吹」に、みな素直によろこびを感じて、イースターに重ね合わせている、というのがドイツにおける実感です。
イースターが日本でいまひとつ盛り上がらない理由は?
同じような宗教行事のクリスマスが日本でもすっかり定着しているのと比べ、イースターがあまり浸透していない理由は、
・移動祝日で毎年日付が変わること
・イースターの前の約一ヶ月半が「四旬節」と呼ばれる節制の時期であること
なのではないかと思います。
「四旬節」は、伝統的には断食で節制し、静かに内省する時期とされています。現代では断食とは行かないまでも、お菓子やアルコールを断つなど「何かを断つ」ことを実行する人はいますし、享楽的なパーティーなども建前では控えられます。
楽しいアドベント期間のあるクリスマスとは対照的ですね。このじっと静かに過ごす前期間があることが、イースターが商業的なイベントになりにくい背景かもしれません。
Image Gallery
バイエルン州の青白カラーの卵オーナメント
本物の卵の殻に手彩色です
ネコヤナギや柳など、枝物も
復活のシンボルとして飾られます。
串刺しヒヨコ(笑)
アニョーパスカル
(ドイツ語ではオスターラム)
教会の子羊のモチーフ
ハイイロガンの親子
公園をうろうろしてますが、近づきすぎると威嚇されます。
りんごの花
ライラック
花咲くマロニエ
ドイツ在住スタッフ・チノ